日々、空想日和ブログo
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溶ける魚

アンドレ・ブルトン

 泉が入ってくる。
泉は街を駆けまわってわずかな日陰を探した。必要なものが見つからなかったので、彼女は嘆きながら、見てきたことを語る。
いくつものランプでできた太陽を見たら、もうひとつの太陽より心にしみたの、本当よ。カフェのテラスで歌を一つか二つ歌ったら、黄色と白の重い花束を投げられたのよ。髪を顔になでつけたら、髪の匂いはとてもきつかったわ。彼女は眠くてたまらないのだが、本当に必要なのは、昆虫の首飾りやガラスの腕飾りに囲まれて美しい星で寝ることだろうか? 泉はおだやかに笑い、僕の手が触れたのに気づかなかった。彼女は僕の手の下でかすかに身をかがめて、鳥たちが彼女の冷気しか知りたがらないことについて考えている。彼女は気をつけなければならない、僕は彼女をほかの場所に連れて行くことができる、町も田舎もないところにだって。ひとりの美しいマヌカンがこの冬エレガントな女性たちのために〈ミラージュ〉のドレスを発表するだろうが、だれがこのすてきな新作を成功させるのか、みなさんはご存知ですか?
泉、もちろん泉です、僕は泉をごく簡単にこのあたりに連れてきたのですが、ここでは僕の考えは可能なものの彼方に退き、無機的な部屋の彼方にさえ退き、そこでは、僕ほど素性怪しくはないトゥアレグ族
たちが遊牧生活に満足し、装飾過剰の妻たちの間で暮らしているのです。泉、それは僕から離れて、あそこで夜を明かす木の葉の渦の中に移っていくすべてのもので、そこで僕の変わりやすい考えはわずかな風にも流され、彼女はたえず斧におそわれる樹木で、彼女は太陽の中で血を流し、そして彼女は僕の言葉の鏡なのです。

 

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